迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*





「………え?」



今、なんて……?



「はっきり言うけど、
みさきちゃんは“妊娠”なんてしてません。」


「え…だって…」



茉奈さんが…

あ。マドカだって。
今思えば、それっぽいこと言ってたじゃん?



「まぁ、生理は止まっちゃってたみたいだけど…
それは、精神的なバランスが崩れたからだと思うわよ。」



そんな…



「…まったく。それで焦って駆け付けたってわけ?」



うなだれる俺に、母さんは呆れたようにため息をついた。


かと思えば、一転。



「今さらどうするつもりだったの?」



厳しい口調で言った。



「みさきちゃんをあそこまで追い詰めたのは…航、あんたでしょ?」


「……っ!」


「最近、家に来ないと思ってたけど…
まさか、あそこまで悪化してるとは思わなかったわ。」



母さんは、今まで俺に何も聞いてこなかった。


何があったのか、も。

みさきが家に来ない理由、も。


でも、気にしてくれていたに違いない。



「もしも、みさきちゃんが本当に妊娠してたら…航はどうするつもりだったの?」