迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*





「……え?」



母さんの肩を掴んで。

揺さ振る勢いで、必死に詰め寄る俺に、


返って来たのは、冷ややかな視線。



……え?何?



「え…?だって、みさきは…」


「ええ。確かに、みさきちゃんは倒れて運ばれて来たわよ。」


「じゃあ…」



俺の腕をほどきつつ、ゆっくりと話し出す母さん。



「可哀想にね。心労がたたったみたいで…」


「……!」



じゃあ、まさか…



「睡眠不足に栄養不足。
あれじゃ倒れても不思議じゃないわね。」



みさきがそんな状態ってことは、子供は…



「今、処置室で点滴してると思うけど…」



母さんの言葉を聞きながらも、最悪な事態が頭をよぎる。

どうしよう?

俺は…










「“子供”って…何?」



…へっ?


俯いた俺に降って来た、母さんの声。


心なしか、声色が変わったような…



「え…?だから、みさきのお腹の…」


「みさきちゃん…の?」


「みさきのって言うか…」



正確には、俺とみさきの、なんだけど…



「…無事なの?」



恐る恐るも、もう一度、尋ねてみれば…












「“子供”なんて、いないわよ。」