「…もう寝ようかな。」



バイトの話は嘘じゃない。


昨日、面接に行って、
明日から働くことになっている。


居ていいとわかってても、
あまり家にはいたくない。


かと言って、行くところもない。

そんなときに、偶然見つけた貼り紙。



そろそろバイトもしなくちゃ、と思っていたところだからちょうどよかった。


時給はすごく安いらしいけど…

私にはぴったりな仕事。



“居場所”が見つかってよかった――















「これ、どうしようかな?」


ベットに入って。

枕元から取り出した“それ”を眺めた。



「“本物”なんて、もうもらえないもんね…」



だから、私は自分で外したんだ。

次なんてあり得ないから。


これ以上、指に馴染ませるわけにいかない。


たぶん、一生、
ここに指輪が来ることはないんだから……






これをくれたとき、

航くんはどんな気持ちだったのかな?



あの約束は“本物”だった…んだよね?