ビターな彼に夢中[短編]

夜遅くに部屋の扉をノックされた。


『起きてる…?』


お兄ちゃんだ…


私には社会人のお兄ちゃんがいる。

お兄ちゃんは智也くんの大学の後輩であり
今は会社の部下だった。


実は私と智也くんも
お兄ちゃんがきっかけで
知り合って付き合うことになった。


『…起きてるよぉ』

ベッドから上半身をのぞかせて
私は返事をした。


ガチャ…


スーツ姿のお兄ちゃんは
今会社から帰ってきたらしい。


お兄ちゃんが部屋の電気をつけて私をみた。


『お前また泣いてたんか』

『……』


『兄ちゃんに話聞かせてよ』


『…お兄ちゃん…』


私は泣きながら
お兄ちゃんに今までのことを話した。



付き合ってる間
智也くんに会えなくてずっと寂しかったこと

やっと逢いたのに自分ばかり嬉しくみえたこと

キスを拒まれたこと…



智也くんは私なんて
そもそもそんなに好きじゃなかったのかもしれない…


私は子どもで
智也くんは大人だった。


お兄ちゃんはずっと話を聞いてくれた。