ビターな彼に夢中[短編]

私は今日も朝からグラウンドを走る。

野球部も走っていた。


澄んだ冷たい空気。

グラウンドに響く声。


私の心とは対称的に
なんて爽やかなんだろぅ…


今日は部活が早めに終わった。


うちは両親共働き。

お兄ちゃんも今日は出掛けるって言ってた。


玄関に手を伸ばすと
鍵は開いていた。


お兄ちゃんがいるのかな…?


ゆっくり階段を登ると

お兄ちゃんの部屋の扉が少し開いていて、中から声が聞こえてきた。


私の足が止まる。


それは
聞いてはいけない声だった。



『…ぁ…んぁ…』



身体中の血が引いていく感じがした。


なに…

お兄ちゃん…?




覗いてはいけない。

なのに
足が勝手に動いた。



ドアの隙間から
お兄ちゃんの部屋のベッドの一部が見える。



白い足の先が見えた。



私は知ってる…

あのペディキュア…



『っ……』


私は逃げるように
階段を一気にかけ降りた。


そして、
そのまま外に飛び出した。