「あの時、紗衣に駆け寄る事もせず心配もしなかった朔夜を見てすごく頭にきた。なんてバカな男なのって思ったの。そんな人だとは思わなかったから、こんな人とは死ぬまで一緒にいたくないって離婚も考えた。」





容赦なくグサグサと胸に刺さる。




「でもね、紗衣と鈴が話す内容って朔夜の事が多くて……私は、朔夜を責める資格はないなぁって思ったの。仕事ばかりで、日本に帰って来ても滞在出来るのは少しでまた仕事ばかり。私は、母親失格だよね。」


「そんな事ないっ。」


「ありがとう………ごめんなさい。こんな母親で妻だけど、許してくれる?」





ごめんなさいって言葉は俺が言うもので、章菜が言うものじゃない。





「章菜、本当に悪かった。許して欲しい――――。」





頭を下げると、頭上から小さな笑い声が聞こえ少し頭を上げれば、泣きそうに眉を下げた章菜と視線が合う。