視線は紗衣に向けたまま口を開く。





｢私、この子達連れて実家に戻るから洋服とか子供たちのオモチャを運んでおいてくれない？｣


｢章菜、家に戻るって………。｣


｢今は朔夜と一緒に生活したくないの。正直、信じる事が出来ない。｣





お母さんが何かを言おうとしたが、虐待現場を一緒に目撃した雪菜は私の気持ちがわかってくれたのか、お母さんを急かすように病室から出て行った。





その時、ずっと握っていた紗衣の手が少し動いたような気がして、すぐに眠っている紗衣に視線を戻す。





｢紗衣、紗衣。｣





耳元で小さく名前を呼び掛けると瞼がピクリと動きゆっくりと開いていく。





｢紗衣………紗衣っ。わかる？ママだよ……。｣





まだ虚ろな目をしてる紗衣と視線が合い、嬉しさのあまり少し声が大きくなってしまう。





紗衣に話かけると口がパクパク動いて何度も頷く。





紗衣が目を覚ましたらナースコールをするように言われてて、ベッドの頭部辺りにあるボタンを押したら看護師さんと担当の先生が急いで来てくれた。