私は拓也から離れて砂浜へ向かった。 が、生まれたばかりの小鹿が上手く歩けない様に、私も上手く歩けなかった。 そもそも“歩く”という感覚がいまいち分からなかった。 「ゆっくり俺に付いて来て。…なるべく見ないようにするからさ」 私から顔を背け、拓也が私の手をとる。 その行動に目の奥が熱くなるのを感じた。 「見てよ?拓也と一緒なの見て欲しいのっ!」 繋ぐ手を引っ張る。 「恥ずかしい、から…その、別の時で…いいよ」 前を向いたままボソッと言う。