流石に一瞬では、ここまでしか覚えていない。


もう一度会いたい。


俺は立ち上がり、あの崖に向かった。


聞こえてくるのは波の音と砂を蹴る俺の足音だけ。


砂浜から崖の下は死角になっているので、今度は慎重に上から下を覗く。


崖の下には岩があるだけでマーメイドの姿は無かった。


「・・・あ」


よく見ると、マーメイドの座っていた岩の所に俺の釣竿が引っかかっている。