「茜、一緒に帰ろ!!」

美紀があたしの手袋を
持って廊下に出る。

「うん…」

あたしも急いで廊下に出る。


「今日も寒かったね~」

美紀は彼氏とお揃いのマフラーを
巻き始める。

「竜也くんとはどうなの?」

「竜也とはね~、いったん別れた!!」

「えっ?」

「いやいや、受験前でしょ? 
 お互い集中出来ないし、
 受験終わるまでは離れようって」

「そうなんだ…なんか偉いね!!」

「ありがと! まぁ、二人が同じ高校
 行くためだし、今は辛抱しなきゃね?」

そう、美紀と彼氏の竜也くんは
同じ公立高校に進学するつもりらしい。

「まぁ、逆に集中出来ないときも
 あってさ~…」

「そうなっちゃうんだろうね?」

「でも、マジで同じ高校行きたいから」

美紀の微笑む顔が綺麗に見えた。

あたしも、そんな顔してみたい…

「でさ…今日は聞けた?」

「へ?」

「ほら…栗田君に志望校!!」

「あ……、昼休みね、美紀が
 調査票出しに行った後、
 栗田くんと話したんだ。」

「どこ行くって?」

「それは聞けなかった。
 でも、あたしが時和多行くって
 知ったみたい…」

「で、栗田君はそれについて 
 何て言ったの??」

「…"凄いね"って」

あたしは涙声で答えた。

「何か言おうとしたみたいだったけど、
 結局、言ってくれなかった」

「そっか…」

「きっと、"違う高校だね"って
 言うつもりだったんだよ?」

美紀は何も言わない。

「あはは…あたしって、馬鹿だよね。
 ちゃんと聞けば、心置きなく
 明日…調査票出せたのに」

「…ちゃんと出しなよ?
 明日、調査票」

美紀はあたしの顔を見ず、
走り去って行った。