お母さんもお父さんもお兄ちゃんも人並みに好きで、 単純に通勤時間がかかるからと始めた一人暮らしでありながら、 どうしてか落ち着かない。 昔からそう、幸せの中に居ると少し恥ずかしくて……。 わざと足音を立てて一段一段蹴る。 ストッキング越しにひやりとした冷たさが伝わった。 お昼は食べたのかという母親らしい問いかけは聞こえていたのに、 なんとなく無視して十数段駆け上がった。