プリクラ童話


「お父さんは? お兄ちゃんは?」

さっきから会話の返しを間違っていることには自覚していたが、

だからといって恥ずかしいのを我慢してまで長話をする努力をしたくはなかった。

要するに、お母さんなら私の心中を分かってくれるだろうという甘え。

娘なのだから、こんな態度もある意味親孝行と呼べるはずだと言っておこう。


「お父さんもお兄ちゃんも会社、お兄ちゃんは仕事片付いたら来るーって。あーちゃんの好きなマドレーヌ買ってくるからーって……それで……」

自分からお母さんに尋ねたから、こうして説明させているのだけれど、

私は「ふうん」と短く返し、元自室――いや、まだ自室として存在している二階へと向かう。