女の子の手から、俺の手に伝わる温かい体温…。



俺の手を見て、流れる血をそっと拭いてくれた小さな手。



そして絆創膏を貼ると、少し安心したように女の子の口元が緩んだ。



そんな女の子の様子を見ながら、不思議な感覚が俺を包んでいった。



この瞬間までの、俺の中の動揺や焦りが抜けていくようだった。



俺の視線に気づいたのか、女の子は少し恥ずかしそうにうつむいた。



「ありがとう!」



俺は女の子に視線を送り続けながら、お礼を言った。



自分でも驚いたけど、その時の俺は多分……



すごい笑顔だったような気がしてた。



「それじゃあ…」



「あ…はい」



最後に一言ずつ言葉を交わして、俺はまた自転車に乗った。



そして俺は振り向く事なく、それからただひたすら自転車をこいだ。



…少しでも早く家に着こうとしてる俺…



なのに今会ったあの女の子の事が頭から離れなかった。



こんな時に俺…何考えてんだよ…。



あの女の子がいた、あの場所…その時の俺の気持ちはなんだったのか。



分かったのはもう少し後になってからだったな。



そして今…俺の部屋には、あの女の子…琴弥がいる。



俺の目の前でニコっとする彼女を大事に思う俺…。



言わないと…。琴弥に言おう…そう決心して今日呼んだのだから。



琴弥なら俺の事、舞華の事も分かってくれそうな気がするから。



俺は祈るような思いで琴弥を見た。