「智也っぁ…とにか…く帰って…きてぇ!舞…華がぁ…舞華がぁっ…うわぁぁああ」



受話器の向こうで母さんが泣き叫ぶ。



俺はとにかく出来る限りの冷静な声を探した。



「どうしたんだよ。帰るよ、帰るから落ち着いて!!」



本当は母さんの声を聞いた瞬間、




なんとなく…なんとなくだけど分かってた。



分かってたんだ。



舞華は………決めたのか…って。



だから母さんの次の言葉に動揺はしなかったのかもしれない。



俺にはどうする事も出来ない……。



何も出来なかった。



出来ないままだった。



それくらい兄としての俺は無力だったんだ。