「あの日…」



「俺の…妹が…さ」



智也君から迷いが伝わってくるような言い方だった。



とても頼りなくて小さな声。低く心の底まで染み渡る声・・・・・。



何か悲しげな声に聞こえて不安になる。



智也君?



どうしたの…?何を言おうとしてるの…?



何か言ってあげたいのに、私より先に智也君が話を続ける。



「……あの朝…さ…俺の妹」




「………が………」





「…死んだ……んだ……」




「え…」



妹がいた事も知らなかった私。



それだけでも驚いたのに、智也君の口から出た言葉は私を絶句させた。



「言おう、言おうと思ってて今日まで言えなかった。ごめんね。突然こんな事言ったら…びっくりするよね」




あの日、



あの朝、



私が智也君に出会えた、あの時…智也君は大切なものをなくしてた・・・・・。



智也君は辛かったんだって…何も知らないでいた私。




なのに、



なのに、



辛かったのに、



私にあの笑顔をくれたんだ。



あの笑顔はどんな思いだったの?