「あの日さぁ……」



受話器の向こうから智也君が小さく呟く。



「んー??何?」



「あの日、琴弥に初めて会った朝の事…覚えてる?」



「うん。お互い大きな怪我しなくて本当によかったよね」



今でも鮮明に残る記憶。



忘れるなんてあり得ない。



あの朝の空気まで覚えているかのような記憶…。



あの出会いのすべてが私の中に染み込んでいるから。



「あの日、俺…めちゃめちゃ急いでたって言ったじゃん」



智也君は話を続ける。



そう言えばそんな事言ってたね。



「うん。なんかそうだったよね。」



「あの時さ…俺…急いで家に戻る途中だったんだ」



智也君のそう言う声はなんだかいつもより寂しい感じで私に届いていた。






「・・・・・?」




どうしたのかな…。気のせい……かな??