帰り際、智也君がそっとつぶやくように私に言った。


「また会いたい…な」



今度は偶然ではなく……



約束していいの?



私の返事を待つ智也君を、その表情を、



私はまともに見れなかった。



何かが始まる気がして……



何かが変われる気がして……



勇気をだして私は小さく頷いた。



手を振って店へと入っていく智也君の後ろ姿を、不思議な感覚で見送った。



すっかり暗くなった空の下、走らせる自転車のハンドルは冷たくて、



ハンドルを持って冷たくなる手の平を熱くなった頬に当てた。



12月の冷えた空気が…今の私には心地いい。



もし、何かを変えられるのなら、



心の中も…そして、私自身の何かをもし変えられるのなら



今日とは違う空の色を見れるのかもしれない。



ねぇ………。



智也君…まだ声に出して呼べないこの名前…。



もっと身近に感じて、



もっと気軽に呼べる日がくるのかな…?