恋人以上、恋人未満。



「理沙さんもこちらにいらっしゃったのね」
「えぇ...」
「さっきおじ様にお会いしたの。隼人さんと一緒だって聞いたから」
「千恵、仕事はもう大丈夫なのか?」
「はい。翔太の会社で指揮をとってくださるですって。結婚披露宴まではもう少し時間がかかるみたいですね」
「千恵!!」






あわてて千恵さんの口をふさぐ翔太。
不安そうな目であたしを見る翔太。
驚いてる桃花さんと隼人さん。
結婚...?翔太と千恵さんが?






「あら、言ってはいけませんでしたの?ごめんなさい、翔太」
「いいんだ。いずれみんなには俺から話すつもりだったし。俺と千恵は年内に結婚することが決まった」
「翔太、いくら会社のためといえ..愛のない結婚は...」
「そうよ!政略結婚でも...」
あせってる隼人さんと桃花さん。






「私と翔太は愛し合ってるの。ね、翔太?」
「え?あぁ...。」
愛し合ってる??
会社のためでもなくて、恋人ごっこでもなくて...
愛してるの??





「理沙さん、披露宴にはぜひ来てくださいね?」
千恵さんのきれいな笑顔も、今は素直にきれいと思えなくて...
そんな自分がほんとにいやで...。
「もちろん!楽しみです。翔太、千恵さん...おめでとうございます」
「ありがとう理沙さん」
「あたし、用事思い出したんで一度父のところへいってきます」







その場にいたくなかった。
腕を絡める二人を見るのはあまりにもつらかった。
どんなに思っても...もう届かないんだ。
翔太は千恵さんの夫になるんだね??





「理沙っ!」
部屋を出るとき聞こえたあの声はまぎれもなく翔太のこえで...
あふれる涙に、自分の弱さを知らされた。
昨日翔太は...あたしにキスしたのに。
翔太の心には千恵さんがいるんだ...





あたしの想いは届くことなく消えて...
もう当たり前にそばにいることさえもできなくなる。
あたしなんかより千恵さんのほうがもっともっときれいだし、かしこいし...
女性として完璧だもん。





かなうはずないよ...。
はじめから...すむ世界が違ったんだ。