「桃花様、来客でございます。」
「入って」
「失礼いたします」
桃花さんの優しくて穏やかな声。
きっともうあんなこと起こらない。
翔太とも別れたし...
でも体は無意識のうちに震えてて、足は動こうとしない。
そんなあたしに気づかず、隼人さんは桃花さんに駆け寄った。
「桃花!きれいだなぁ...ほんとに...きれいだ」
「隼人...ありがとう」
「理沙,,...」
悲しそうな瞳であたしを見つめる翔太。
やっぱり気づいてたんだ。
ここであたしが逃げたら...きっと翔太はまた自分をせめる。
大丈夫、大丈夫。
「失礼いたします」
「...理沙、さん...」
目を見開く桃花さんと...翔太。
「あなた、どうして...ここに?」
「中西理沙です...」
「中西....??それで...っ」
あたしはにっこり笑って桃花さんの言葉をさえぎった。
「とってもきれい...」
「あなたも美しいわ。...ほんとに後悔してるの」
「そのことはもう、忘れました。今こうやって...幸せだから」
「でも...翔太とは...」
「いいんです。友達ってあたり前にそばにいれる存在だから」
「理沙さん......」
隼人さんはじっと目を閉じて、何も聞いてこなかった。
翔太もうつむいて、ただ立ち尽くしてた。
あの日のこと思い出してるの??
だからそんなに切ない表情なの?
「しょ...」
空気を変えようと口を開いた瞬間。
「翔太??ぁ!ここにいたのね」
「千恵。探してたのか?」
「えぇ。おじ様がお客様を案内してるとおっしゃってたからここかと思って」
部屋に入ってきたのは千恵さんだった。
翔太の腕に腕を絡めうれしそうに笑ってる。
翔太の......彼女??

