「二宮コーポレーション次期代表、二宮翔太と申します」
そういって名詞を差し出す翔太。
...あたしに気づいてない??
それとも気づかないふり??
どっちにせよ今は翔太に合わせていよう。
隼人さんもいるし...
「中西理沙です。よろしくお願いします」
マナー教室で習った名詞の渡し方も、お辞儀の角度もなんだか相手が翔太だとぎこちなくて...
隼人さんに怪しまれないか、そのことばかり考えてた。
「桃花のところへ案内するよ、隼人」
「頼む。このパーティーは二宮主催か?」
「まぁそんなとこだ。婚約破棄した罪滅ぼしってやつ。」
「王子様は大変だな」
「結局俺に自由はないよ」
いつもどおりの翔太。
隼人さんには本章ばらしてもいいの??
「ぁ。僕たちは幼馴染なんだ。この前食事のときに話しましたよね?」
「えぇ、少し。桃花さんと3人でよくあそんだ...と」
「うん。その桃花が結婚するなんて...考えられないよ」
また寂しそうな笑顔を見せる隼人さん。
「花嫁姿、きっと美しいでしょうね」
隼人さんは一瞬おどろいた顔をして、すぐにまた優しい笑顔になった。
翔太は少し微笑みながらあたしの前を歩いてた。
遠い存在、そのとき確かにそう感じた。
こんな世界で翔太は生きてきたんだ。

