恋人以上、恋人未満。



「理沙さん?」
「は...やとさん...」
隼人さんは何も言わずにあたしの涙をぬぐってくれた。
「落ち着いた?」
一時間ぐらい、隼人さんは何も言わずにずっとそばにいてくれた。
「はい...ごめんなさい」
「謝らなくっていいよ。俺が勝手に来たんだし」






俺??しかもいつもの丁寧な話し方じゃない...。
不思議そうに隼人さんを見てたらばっちり目はあってしまった。
「あ?話し方?ほんとはこんなだよ。俺だって普通の男だからねぇ」
「そ...うですよね」
だって翔太も仕事と学校以外はこんなだったもん。
いつもと違う無邪気な笑顔で...
あたしの頭をくしゃくしゃってしてくれたの。







「理沙...って呼んでいい?」
「ぇ?もちろん」
「さっき翔太が理沙って呼んだのにも、理沙が翔太って呼び掛けたのにも驚いた。」
隼人さんは、ゆっくり語りかけてくれる。
気持ちがついていけてないあたしにはその話し方がとても優しく感じて...
とまったはずの涙はまたあふれ出す。






「翔太の彼女って理沙だったんだな。食事のときは無神経なこといってごめんな?」
「そんな...もう別れたんで」
「でもまだ好きなんだろ?」
「....それはっ」
「大丈夫。誰にも言わないよ」
何も言葉がでなかった。
翔太はあまりにも遠い存在で、隼人さんはこんなにもあったかくて。







「なぁ...付き合ってなんていわないし、翔太を忘れろとも言わない。俺のこと男として見てくれない?好きになれなかったら付き合わなくていいし、今すぐじゃない。これから少しずつそういう風に俺を見てほしい」
「...わかりました」
「これからは敬語も使わなくていいし、隼人って呼んで?」
「はひ」
あたしの両頬をつかんで笑う隼人さん...じゃなくて隼人。






あたしきっと...この人ならって希望を抱いてる。