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■名前






今まで繋ってたものは、迷わず切れる程儚いものだった。







どうにかして澤木とメアドを交換して一週間後、俺の周りから女をほとんど消した。
今の俺の携帯の電話帳には、家族や親友など、限られた異性の電話番号とメアドしか入ってない。
自分の行動力を実感する程、彼女が俺に焼き付いて離れないことを知る。
たった一回の、ただ数分の出来事だけで。
それが少し、心地いい気がした。

教室。教卓には誰もいない。
教師が忘れているのか、始業時間からもう30分は過ぎた。


「なぁ千明ー」


隣の席のヒカリが声をかけてきた。


「んー?」


「暇ー。何か面白いことねぇ?」


「ない。」


きっぱり答える。
と、ヒカリがため息をついたのが聞こえた。


「そんな邪魔者扱いすんなよなー。…誰とメールしてんの?」


「秘密。」


ヒカリは拗ねて、俺の様子でもうかがってるのだろうか。
俺は自分の携帯の画面に目を向けたまま、そんなことを思った。



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