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「もう……いいよ。なっちゃったことはなっちゃったんだし。」


ため息混じりに言う彼女。


「…許してくれるの?」


「しょうがないもの。過去はかえられないのよ。
それにかなり反省してるし、結構考えてくれたでしょう?」


「?」


俺は何のことだかわからず、首を傾げてみせた。


「私を連れてく時、"杏花"じゃなくて"澤木"って呼んだでしょう?
私の本名ばらさないように。」


あぁ、そのこと。
別にあれは杏花のためというか、俺のためだけど。
彼女の秘密を共有することで、杏花の近くにいるような錯覚に襲われるから。

でも杏花にそう言ったら盛大なため息をつくだろうから、心の中にしまっておこう。


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