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■前向き






この言葉しか、今は言えなくて。









特棟三階の非常階段。
転落事故防止のためにセメントの壁で遮られているこの場所は、隠れて会うのには絶好の場所だ。







「…千明のばか。」


隣でそう、恨めしそうに呟く彼女。


「…ごめん」


俺はそれしか言えなかった。


「約束したのに。」


「うん。」


「関わらないって言ったくせに。」


「うん。」


「…昨日のあのせいで、友達が避けてくるんですけど。」


「本っ当にごめんなさい。」


謝ることしかできない俺。
亜也の言うことなんて聞かなければよかったと、頭の中で人のせいにしてみた。



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