.





「…ちぃ。」


「ん?」


「行ってきなよ、大丈夫だから。」


亜也が言った。
その言葉に俺は驚くが、亜也は笑って続ける。


「あたしね、ちぃのそういう苦しそうな顔、見たくないんだ。」


そして俺の腕からペンケースとルーズリーフを奪ってヒカリに渡し、俺の背中を押す。


「いってらっしゃい。」


「あや…」


「ほーらっ、行っちゃうよ?」


「…ん」


「ありがと」と小さく言って、俺は亜也に背中を向けた。







誰かに背中を押されないと動けないほどに臆病になってた。

君を欲しがる俺を必死に抑え込んでいた。



でも、無理なんだ。








特別棟の、授業のありそうな教室の戸を開けていく。
生徒と教師が目を丸くして俺を見たが、そんなのにかまっていられない。

最上階の一番端、視聴覚室。






もう、無理なんだ。



.