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■こっちをむいて






俺のことだけ考えていてくれたらいいのに。







「千明、次移動だってさ。」


俺を起こすため、少し大きめの声で言うヒカリ。
それに「あぁ」と返事をし、体をおこして伸びをした。


「お前よく寝るよなぁ…そのわりには成績いいよなぁ。」


ヒカリが恨めしそうに見てくる。


「別によくないよ。」


そう言って、引き出しからペンケースとルーズリーフだけ取り出した。教科書は全部家。
今の言葉はヒカリにとったら嫌味にしか聞こえないかもしれない。
でも事実だ。
たしかに400人中50位以内にはいるが、杏花はいつも10位以内にいる。
順位なんてどうでもいいことだが、この数字の差さえ、彼女を遠く感じる理由の一つに思えてしまう。


「追いつけなきゃ意味がない。」


「は?何に?」


俺の言葉にヒカリは首を傾げていた。



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