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■髪色






ねぇ、心の中でだけだから。








『もしもし。』


「杏花?俺、千明。」


『知ってる、画面に出るもの。』


それもそうか、と少し笑いながら返した。

学校が終わって家に帰り、夜10時30分になるのと同時に彼女に電話する。
この時間までは習い事やらで電話に出てくれない。


『最近さ、毎日電話してくるね。』


「迷惑?」


『んーん、ただ思っただけ。』


「ならいいや。」


こんな他愛ない会話に顔が綻ぶ。
電話とメールは何も言われてないから、何も考えないで出来る。


「今日は塾でしょ?お疲れ。」


『ありがと。電話で言われるのって変な感じ。』


「そ?」


『うん。ありがと。』


「どういたしまして。」


二回お礼をいう彼女。きっと今、笑ってるんだろうな。


「…ねぇ杏花。」


『なぁに?』


「聞いてもいい?」


『いいよ。』


彼女の承諾。今ふと思ったことを聞いてみよう。


「杏花の髪綺麗な蜂蜜色じゃん?それってどこで染めたの?」


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