.





その言葉にため息をつき、「…そっか」と相槌を打ちながら立ち上がる。
それに彼女も従う。


「ねぇ、急用だったの?」


また彼女は尋ねてきた。


「違う。会いたかっただけ。」


杏花を見て言うと、細くて白い喉が小さくひくついた。
手を伸ばしたくなる。


「千明さ、私が関わるなって言ったの覚えてる?」


「うん。」


「なのに私を呼ぼうとしたの?」


「うん。」


俺の答えに、杏花はため息をついた。


「…もし私が今携帯持ってたとしても、きっと会おうとはしなかったよ?」


「うん、わかってる。」


「じゃあなんで…。」


彼女は意味がわからないと言いたげだった。



「…会えなくてもさ、杏花の声、聞けると思って。」



.