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■影探し






無意識に、俺は彼女を探していた。
否、気づかないふりをして、本気で探していた。




「千明ー!」


「痛い。なんだよ。」


後ろから強い力で首に絡まるように飛びつかれた。
ヒカリ。
女みたいな名前だが、ワックスで髪を見た目も心も男である。


「おまえさぁ、女探してるって本当?」


くっついたまま聞いてくる。
むさ苦しい。首が痛い。
どこでその話を聞いたのか知らないが、やけに楽しそうに聞いてくる。


「そうだよ、人探し。」


とだけ答えた。


「それってさぁ、澤木杏(サワキ アン)だろ?
二組のさ、髪の毛黄色いやつ。」


「…まじで?」


こいつから彼女の情報を得るとは思わなかった。
クラスは九組まであって、二組は文系クラス。
どうりで理系クラスの九組の俺と会わないはずだ。
一年と同じ二階には滅多にいかないから。



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