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「っ、千明っ。」


鬱々としていたら、横から名前を呼ばれた。
淡い期待を寄せながらそちらを向くと、


「…誰？」


間抜けな顔をして尋ねてしまった。


「え？えっと…澤木…です。」


彼女はおずおずと、足を少し折って俺と目線を合わせながら言った。
走って来たのだろうか、少し息を切らしている。
だが俺は、彼女を気遣う素振りも出来ず、穴が空きそうな程凝視していた。

俺が「誰」と尋ね、確認したくなるのは最もだと思う。

彼女、杏花は、普段とはあまりにも違いすぎた。
蜂蜜色の長い髪は漆黒で軽く結われていて、そして、赤縁眼鏡をかけていた。

自信を持っていいきろう。
たとえ彼女が同じ学校の人間に会ったとしても、絶対バレない。
そして、いつもよりもクールに見えた。


「あのー…千明？大丈夫？」


「あ、うん…驚いて固まってただけだから。いつもと大分違うね。」


俺は杏花を上から下まで眺めた。
その際、彼女はクルリと一回その場で回った。




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