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「もう!ちぃちゃんの馬鹿!痛っ」


文句を言っていた女は、玄関に向かおうとしていた他生徒にぶつかり声を荒げた。


「ちょっと、何すんのよ!」


女子生徒はぶつかった相手に怒鳴る。


「や、今のはお前が悪いだろ。」


俺がそう宥めると、女子生徒はしゅんとして上目使いで再び腕にすがりついてくる。
だから、やめろって。


「いいの。前見てなかった私も悪いし。」


相手の言葉に目を向ける。
眼鏡をかけた、いかにも委員長ですみたいな女子生徒が地面に手をついて立ち上がった。
光に透ける蜂蜜色の長いストレートの髪が、スカートをはたく際に小さく揺れる。
腕には分厚い、難しそうな本を抱えていた。


「あ」


彼女が立ち上がるときに、胸ポケットに入っていたらしい携帯電話がカツンと音を立てて落ちた。
それに気づき、拾い、彼女に「はい」と渡す。


「…。」


乱暴に携帯を奪われた。俺の手を払うかのように。


「ありがとう。」


そう一言言って、彼女は校舎内に入っていった。




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