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あまりにも綺麗に笑って言うから、俺は惹き付けられて何も言えなかった。
恵里佳の手が俺のほうに伸びてきて、頬に触れる。


「もう、誰かのために頑張らなくていいの。
自分のために恋愛していいんだよ」


「―っ、」


その言葉に、無理矢理止めた涙がまた溢れる。


「…泣かせたかったわけじゃないの。
苦笑いばっかさせたかったわけじゃないの。
……あたしらを真っ直ぐに受け止めてくれる千明を、無くしたくなかっただけなの。」


泣きそうな目で、でも笑いながらそう言う恵里佳に、言葉で返せなくて。
ただ頷くだけしかできなくて。



「他の子たちはあたしがなんとかするよ。
ちゃんとわかってくれる子ばっかだし。
…責めないであげてね。」


「…なんで俺が責めなきゃいけないの?
俺には、そんな資格ないよ」


なんとかして言葉にすると、恵里佳はまた笑った。
そして立ち上がり、一度目を擦って、「じゃあね」と言って保健室を出ていった。



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