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■ もう、いいよ。






目が覚める度に迎えるのは、
君の名前を呼べない日常。








「ちぃ、大丈夫?」


「んー…」


机につかまりながらしゃがむ亜也に、俺は椅子に浅く座り、反り返りながら音だけで答えた。


「…大丈夫じゃないね。
きぃ欠乏症の禁断症状って感じでしょ。」


問いつめてくる亜也に、苦笑いで返した。


「…亜也はいいよな」


「何が?」


亜也が首を傾げるのを見て、俺は座りなおす。


「女だから友達でいられるし、"きぃ"って呼べる。」


「呼べばいいじゃん。きぃって。」


「やだよ。俺は名前で呼びたいもん。
それに俺が呼んだら、またあいつが傷つく。」


そう言いながら、今度は机に頭を預けた。
亜也は俺の髪に指を埋める。


「…どうしてそんなネガティブ精神なの。
もっと前向きに考えなよ。」


そう言って頭を撫でてくる。
何故か、すごく安心した。



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