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■「さよなら」を言えるもの






もうきっと、君に恋焦がれてはいけないんだ。








廊下で、君の髪が揺れるのを見る度に、手を伸ばしそうになる。
駄目だとわかっているのに、いつの間にか目で追っている俺がいて。
溢れてしまいそうなこの想いは、もう…捨てるしかないのかな。




「あほだなーお前は。」


「うるせ」


隣の席のヒカリの言葉に、俺はそれだけ返した。
ヒカリに顔が見えないように、左腕を立てて机に伏せる。
きっと今すげーかっこ悪いから、俺。


「だってさ、普通勢いで言う?
もっと言い方あっただろ?」


「…お前だって早とちりで騒いだくせに。
人のこと言えるのかよ」


「…うるせー」


「…」


「…」


沈黙。
今までの毎日は、こんなに長く静かなものだっただろうか。
彼女のことを考えていたら、一日なんてすぐに過ぎてしまうのに。
今は、彼女を思い出すと胸が軋むように痛い。



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