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【東条君てやだ。すっごい他人行儀。君付けでいいから名前で呼んで。】


ずっと違和感があったんだ。


『東条君。』


澤木に呼ばれて新鮮だと思った。
でもやはり、呼ばれ慣れないものは苦手だ。
名前なら、うん。


【やだって…ちょっと笑っちゃったじゃん。
しかも他人行儀って…実際に他人でしょ?まぁいいけど。
じゃあ千明君?それとも千明?】


メールを見て、心臓が跳ねた。
面と向かって、澤木の声で言われたわけじゃないのに。
呼び捨てで呼ばれて、かなり喜ぶ俺がいた。
面と向かって呼ばれたら、俺はどうなってしまうんだろう。


「…千明?何顔赤くしてんの?不気味。」


「うるせー」


俺の変化に気づいたヒカリが声をかけてきたが、一言で退ける。


落ち着け。メールで顔色までは伝わらない。
普通に打てば何事もなく終わる。


【呼び捨てでいいよ。俺も杏って呼び捨てにしてい?】


恐れ多くもでしゃばってやった。
面と向かってはなかなか言えない気がしてたけど、顔が見えなければ何でも言える。
結構いいポジションかもしれない。



【じゃあ千明ね。
呼び捨ては別にいいんだけどね?…名前、間違って覚えてる】



「…はい?」


メールで打つ前に、言葉として吐いてた。




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