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二人して、どこか遠慮しあう。
そんな関係に慣れたくないのに、もう日常になりかけてる。
心とは裏腹に進む現実を、俺は自嘲ぎみに笑った。


「千明どうしたの?わ?!」


俺をまたのぞき込もうとしたのだろうか、体勢を崩した彼女は俺の前で倒れそうになる。
瞬間、口にしたのは、




「杏花っ!」




彼女の名前だった。
倒れそうな彼女のを腕を掴み、宙ずりの状態で倒れるのを止めた。


「あ、ありがとう。」


「ん。」


短く返事をして、彼女をまっすぐ立たせる。
そして周りを見た。


「大丈夫だよ、千明。」


俺の行動の意を察したのか、彼女は俺のブレザーの袖を引っ張る。
でも、俺は周りを見渡す。
彼女の名前を、本当の名前を口にしてしまった。

これ以上彼女から奪わないように、これ以上彼女に嫌な思いをさせないために。
秘密にしなければいけなかったことをこんなに簡単に口にするなんて。


「…?」


だが、周りに反応はない。
こちらを盗み見するやつも、影で話すやつもいない。
どうして?



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