幼くして命を落とした光。遥にとって、光がどんな存在であったかも知らずに千夏の父親は笑っていた。

「おい、おっさん」
「は…?」
怒りをおさえながら、遥は父の前に現れた。
「何だね、君は?」
「浅井遥。…おっさん、俺はお前を許さねえ!」
「浅井遥…? ──!!」
遥の首もとを見て、父親は身を強ばらせた。
月のネックレス…。


「笑えるだろ、お前の父は自ら罪を証言したんだ。俺がいるとも知らずに…!」
「そんな…」
千夏の瞳に涙が溜まる。
実の父親は、惹かれはじめていた彼の妹を殺した。
そして自分は、彼の復讐のために利用された。いくら好きでも、遥にとって道具にすぎない。

「千夏」
名前を呼ばれ小さく返事をする。顔を上げると、そこには遥の柔らかな笑顔があった。
先ほどの怖い顔はしていない。
「俺が全部正直に話したのは、お前に隠したくなかったからって言ったろ。お前をだましてるような気がして嫌だったんだ」
「遥さん…」

「好きだよ、千夏」
「!!」
遥の突然の告白で、千夏の頬は紅潮する。
「千夏が好きだ」
遥の言葉が千夏の頭の中でリピートされる。聞き間違いではないかと思ってしまう。

だって自分は…遥と彼の妹を傷つけた犯人の娘…。罪人の血を引いている。
遥を好きでいると、彼を苦しめてしまうのではないだろうか。

でも、私も遥さんが大好き……。