きっと彼は喜ぶだろう。


喜んで、私から離れるのだろう。


そして私のことなど忘れるだろう。


忘れて、幸せになるのだろう。


それがわかっているから、私は彼を傷つけ続けてきたのだ。


彼を縛る方法が、それしかないと知っていたから。


けれど、今彼の苦しむ顔を見たら私はきっとたえられない。


彼に冷たくあたる度に、彼を傷つける度に、


何度も必死に押し殺してきた「ごめん」の言葉を、私はきっと抑えられない。


あなたは何も悪くないのだと、


私が姑息で最低だっただけなのだと、


きっと彼に告げてしまう。


きっと彼を許してしまう。


そしたら彼は私から離れて、私を忘れて、


きっと、そうなることが彼にとってはこの上ないほど幸せなのだろう。