高校の頃、彼のことが好きだった。
それはかなり憧れに近いものだったけれど、一言話すだけてドキドキした。
そんな彼にケガを負わされて、私はすべてを失った。
友達も、キラキラと眩しいあの時間も。
すべてを失った。
すべてを失って、苦しくて、悔しくて、怖くて。
そしてあの日、私は彼を傷つけた。
悲しそうに歪んだあの顔が、独りぼっちの私へ降り注いだ、唯一の光だった。
その時私は知ったのだ。
彼は私には逆らえない。
私が彼を許さない限り、彼は私から離れない。
彼を傷つけ続けることで、彼を縛り付けることが出来るんだ、と。
……じゃあ、許してしまったら?
許してしまったら、どうなるの?

