…一体何が成程なの?

私には全く検討がつかなかったが、いい加減ハイネの態度に苛立ちを覚えた私は、


「…お願い、返してハイネ。」


手を突き出し、強い口調で彼に言う。

…だが。


「“これを持つ者、エスタンシアの血を引く者なり”」


彼はペンダントの裏面を見つめたまま突然口を開き、私を見た。


「この国に入る前、俺達の処遇が…死刑囚二人が脱獄したという事になるか、俺がアンタを誘拐した事になるか…五分五分って言ってたのを覚えてるか。」


確かに、かつてハイネはそう言っていた。
今でもはっきりと覚えている。

だが、それが一体どうしたのだろう。


「…ええ、覚えているわ。」


私が首を傾げていると、彼は再び歩き出しながら、ペンダントを指で回す。


「正直あの時、俺は前者になると仮定していた。
もし俺がそのラザレスとかいう奴の立場だとして考えると…その方が一気に二人とも始末できるし、アンタの事を公に明かさなくても済むからな。」


「………。」


「だが、報道内容は後者になった。つまり、アンタを殺せない理由が出来たからだ。」


…私を殺せない…理由?

確かに、考えてみればおかしな話だ。
あれ程までにラザレスは私を邪魔者扱いして、今か今かと殺すチャンスを伺っていた。

それなのに…今回の報道は、表面上ではあるけれど何故か私を守る為のもの…。


「アンタを殺せない理由。…ラザレスが欲しくて欲しくてたまらない物。まさかアンタが身に着けているだなんて思ってもいなかった物。」


「…まさか、」