花嫁と咎人


眠そうな顔をしながら私の耳元で悪態を付くハイネ。


「そういう失礼な事を言ってはいけないのよ!」


ぺしっ。
私の手が弧を描き、軽くだが彼の後頭部に当たる。


「痛っ、冗談だよ!」


頭をさすりながらぶつぶつと文句を言う彼。
そこでようやく我に返った私は、思わず自分の手のひらを見つめた。

あ、私ったら…!
これで人を3回も叩いてしまったわ…!

普通ならよくあるかもしれないことが、私にとってはあり得ないことで。

でも、その都度、縛られていた何かが解けていく様な気がした。
ハイネやタリア…人と関わり触れ合う事で分かるもの。

少しだけ痺れる手のひらを見つめながら…思う。


「…でも、人を叩いたら、自分も痛むものね…。」




その後、タリアから大まかな部屋案内をしてもらい、今夜眠る場所を決めることになった。


「まあ大体どこに何があるかは分かっただろうから、好きに使ってくれて構わないからね。
寝る場所は…そうだね、フランは私の部屋の隣にある空き部屋を使いな。ハイネは椅子で十分だろ?」


「は?何で俺だけ椅子なんだよ。」


眠気からの苛立ちもあるせいか、大層不満そうな表情をし、ハイネは自らの寝床に文句を言う。

だが、傲慢だねと、そんな彼に向かってタリアは煙管を突きつけ不敵な笑みを浮かべた。


「…なんだいお前、そんなにアタシと一緒に寝たいのかい?それともお目当てはフランかい?」


確かにハイネが椅子を拒否すれば、必然とそうなってしまう。
…私が椅子で寝たほうがいいのかしらと一瞬思ったが、ハイネの罵声によりその考えはすぐに吹き飛んだ。


「ばっ馬鹿か!誰が!一緒に!寝るだって?!お、俺は椅子で結構だよこのクソアマ!」


そう言い捨てるなり、彼は器用に椅子を並べて寝転がりふて寝を始める。


「顔が真っ赤だよ、このクソ坊主。」