花嫁と咎人


こんなにもエルバートの事が聞けるなんて思ってもいなくて。
心なしか笑顔が零れる。

初めて聞く、彼の話。

今日は…初めての事ばかりね。


「それから一ヶ月に2回くらい来ては、フラン、あんたの事を話していったよ。自分の似顔絵を描いてくれただとか、今日はずっと泣いてただとか。
…けど一度も不満を言った事は無かったねぇ。むしろ私に相談しては悩んでの繰り返しだった。」


「………。」


「それでつい数日前くらいに、突然エルバートがやってきて…私にこういったんだ。

『…もう、貴女とは会えなくなるかもしれない。貴女は私のよき理解者です。貴女ほど信用できる人物は他にはいないでしょう。
だからタリア、貴女に頼みたい事があります。
もしもこの店に姫様が来たら、どうか、貴女の手で救って差しあげて欲しい。

きっと、間も無く世は波乱の渦を巻き始めるでしょう。
そして姫様は…その渦に巻き込まれてしまうに違いない。

姫様は私の命よりも尊いお方です。
あのお方を失くす訳にはいかない。

恐らく私は、ただでは済まないでしょうし、
勿論…そのつもりでいます。

私にはもう…貴女に頼る他に術が無い。
どうか、頼みます。』

……そして一本の剣を置いていったよ。あんたにって…。」


それからタリアは私に一本の剣を渡した。
ずっしりとした重み、綺麗に装飾が施された刀身と柄…鞘。

…それはとても重たかった。
彼の想い…願い、祈りが沢山詰まっていたから。


「馬鹿ねエルバート…。どうしてこんな大切な物を私の為に置いて行ったの…」


語られざる物語が、私の心を貫く。
嗚呼エルバート。
あなたはどれだけ私の心を貫けば気が済むの…?


「私は…あなたに何もしてあげられなかったのに…。」


涙が留まる事は無かった。
彼の思いを知れば知ってしまう程…あの夜の後悔が増していく。