花嫁と咎人


その言葉を聞いた瞬間、思わず瞳から涙が溢れて…私堰を切ったように泣いてしまった。

エルバートが残していった温もりにようやく触れることができたような気がした。
そしてそれほどまでに彼は私の人生に大きく関わっていたこと、かけがえの無い存在だった事を実感する。

以前までの私はこれからもずっと、ずっと先まで、彼と共に、彼が側にいる世界で生きていくのだと信じて疑わなかった。
いつも彼が側にいて、助言をしてくれて…。
いつか私が結婚しても、良き相談相手として私を支えてくれるのだと思っていた。

それなのに、嗚呼。
誰がこんな結末を予想できただろう。
あの笑顔、あの声、あの癖。
彼の思い出が…いつまでも私の頭の中から離れてくれない。

両親を失い絶望の淵に立たされた私を救ってくれたエルバート。
たった一人残された私の大切な家族。

どうか叶うなら、もう一度私の目の前に現れて。

願っても届かない祈りが…涙となって溢れ出る。


「…そうかい…エルバートは…。」


そう、彼女は私の話を聞いて悲しそうに目を伏せた。
暫くして落ち着いた私は、城で起こった事、ハイネと出会い…城から逃げてきた事…全てを彼女に説明した。

勿論彼女も自分の事を沢山話してくれた。


「あたしの名前はタリア・ヴァレンティン。エルバートと出会ったのは、あたしがまだこの国に来て間もない頃だったからもう何年も前になるねぇ。
近くの店で万引き犯と間違われてた所を助けてやってのが事の始まりさ。…笑えるだろ?」


おどけ話のように笑って話すタリア。
落ち込む私を元気付けようとしてくれているようだ。

その気遣いがとても心にしみる。


「それから店に招いてやったらここは違法店だ!とか言って騒ぎ出しちまって。でも私の思いとか考えとか話したらすんなり諦めてくれてさ。…あ、こいつは良い奴だって、その時あたしも思ったよ。」


「…エルバートらしいわ。」


グラスにフルーツジュースを注いで貰いながら、私は思わず笑ってしまった。


「でもいつ頃かねぇ、物凄い笑顔で正式に女王の専属騎士になったとか報告された時はたまげてひっくり返るかと思ったね。
あんたにそんな仕事向いてないよって言ってやたったら、やってみなきゃ分からない、姫様は私が必ずお守りするんですって怒鳴られたよ。」