―…そう。
初めて彼のそんな姿を見たから。

今まで一度たりとも声を出して笑った事のない彼が。


エルバートがそういった瞬間、オーウェンの表情に微笑みだけが残る。


「変わることは、罪じゃない。」


そして彼が左手を口元に当てた時、その薬指に優しく光る何かに気が付いた。

よくみれば、それは紛れもなく銀色に輝く指輪。


「…まさかオーウェン様、それ。」


思わず指を指し、口ごもる。
しかし彼は今更何を、といった感じに言い放った。


「ん?ああ、昨年にな。というか、お前も知ってるだろう。」



つまり、


“結婚済み”



と、いうことでしょうか。





「…え?!ちょっ、だ、誰とですか!私はそんな話聞いてませんよ…!」


「何?おかしいな、国王には文書を届けたはずだが。」


「そんな馬鹿な!というか極秘結婚ですか、そうですよね、新聞の記事に載ってませんでしたし!」


立ち上がり、戸惑うエルバートの姿を見て再度笑うオーウェン。

別にいちいち知らせる程の事でもないだろうと彼は言うが、傷つきましたと呟いてエルバートは椅子に座り直った。