「王座は私のものだ!」
お前達は誰だ。
異国人は追放しろ。
処刑だ。
皆処刑だ!
叫ぶ彼の姿はもはや見るに耐えない姿だった。
悪が笑い叫ぶ光景に、誰もが息を呑んだ時。
ラザレスの首元に剣を突きつけたまま、今まで頑なに口を、心を閉ざしてきたオーウェンの唇が小さく開いた。
「…父上、もう、いいじゃないですか。」
悲痛に下がる眉。
苦悩に歪んだその表情から零れだしたのは、
「これ以上…、罪の無い人達を…犠牲にしないで下さい。」
今まで言えなかった言葉。
「オーウェン。貴様、父を裏切るのか。」
ラザレスが声を押し殺しながら息子の顔を見る。
だがその途端、オーウェンの瞳からは清らかな涙が溢れだし、
「裏切ったのは、貴方の方ではないですか…!」
彼は一層強く剣の柄を握り締めた。
流れ出しそうなほどに、胸で渦巻く黒い感情を必死に塞き止め、
何度も唸っては呼吸を整えた。
剣を振り下ろしてしまいそうな自分の手を必死に押し留め、
ひたすら過去の記憶と闘った。
もっと言いたい事があっただろう。
もっと問い詰めたい事があっただろう。
それなのにオーウェンは無理やり自分を落ち着かせ、溢れる涙と怒りを拭う事無く、
只。
切なる想いを父に向けて発した。

