花嫁と咎人


何分も走り、私達は国王の間に逃げ込んだ。
久しぶりに入るその場所には、まだ父の面影が残っているよう。


だが、私は息継ぎをする暇も無く…


「…、」


彼に強く抱きしめられた。



漏れる呼吸。

乱れる心臓の鼓動と触れた彼のぬくもりが、私の心を一層強く締め付ける。

何も言わず只抱きしめられただけ。
それなのに、とても嬉しくて。

姿は変わってしまっても…彼だと確信できた事が嬉しくて。


私はそっとその大きな背中に手を回し、ぎゅうっと抱きしめ返した。



「―…、ハイ、ネ…!」



ただいま、ただいま。

やっとあなたを思い出せた。
やっと、あなたの元へと帰る事が出来た。


言葉にならい感情が押し寄せて、これが嘘ではないかと思ってしまうほど、
愛おしさが込み上げてくる。



愛してる。

あなたを愛してる。

愛しくて、死んでしまいそうだった。



ゆっくりと腕を離されて、撫でられる頬。

それから優しくハイネは微笑むと…私の唇にそっと口付けを落とした。


互いに潤んだ瞳が交差し、片方ずつのピアスが輝きを放つ。
閉じた瞳から零れた涙は…まるでダイヤモンドのように輝いて。


止まったままだった私達の時計は、再び時を刻み始めた。