花嫁と咎人



耳に響いたのは、覚えの無い金属音。


女王は閉じた瞳をゆっくりと開けると、自分の足元に小汚いローブと縄が落ちているのに気がついた。

そしてその先に視線を投げれば、見慣れないブーツを履いた二本の足が佇んでいて。
勿論それはラザレスのものではなかった。


会場が静まる中、女王は顔を上げる。



「―…、」



するとそこにあったのは男の姿。



胸元で煌く勲章、肩からかかる青い懸章。
見たことも無い真っ白な軍服を着こなし、サーベルを構えるその背中は…確かに見覚えがあった。


高鳴る鼓動。
揺らぐ視界。


短く切られた銀髪が靡いた時。

男は小さく唇を動かした。



「終わりだ。」



瞬刻。

彼のサーベルが一線を放つ。



「―…ッ!」



思わぬ攻撃に、ラザレスは怯み、慄き、後ずさった。
だが男は悪を逃がすまいと、軽やかな剣技で確実にラザレスを席捲してゆく。


彼は、余りにも強かった。
故にラザレスは彼を見くびっていた。


女王もラザレスも知らない彼の正体。







“それは極悪。死刑囚であったはずの人物”