剣術なんて、殆ど習った事は無かった。
勿論今だって振り回しているだけ。
でも、それでも。
不思議な事に負ける気など微塵もしなかった。
剣を振り回したまま、ひるむ憲兵達の間をぬって私は城門を突破する。
「…お、追えー!」
勿論、侵入者を入れまいと憲兵達は追いかけてくるが…
その時。
「こっちだ!」
誰かに呼ばれ…私は声のする方に目をやった。
するとそこには銀色の髪に紅い瞳を持った女の人がいて。
彼女は剣を持ったまま私の前に躍り出ると、
「この、不届き者共が!」
憲兵達を一気に蹴散らした。
「行け!」
そして次から次へとやってくる憲兵達の斬撃を止めながら彼女はそう叫ぶと、口元を歪めて。
「案ずるな。…私は、貴女の味方だ。だからさあ、行け!」
再びそう叫ばれ「感謝します…!」と私は軽く会釈をすると、城の中へと入り込んだ。
…城の中は外と全く違って、とても静かで冷たい空気が漂っていた。
何ヶ月ぶりかに戻った私の家。
でも、その時とは違う冷たい空気に城は完全に支配されていた。
寒さを凌ぐ様にローブを握り締め、小さく息を吐く。
それにしても一体、あの女性は誰だったのだろう。
綺麗な銀色の髪、紅い瞳。
まるでハイネと同じような顔立ちの―…。
だが、その時。
私は再び幻覚の様なものを見た。

