その場の空気に似合わない、陽気なファンファーレが鳴り響いた。
一気にざわめく会場。
貸しきられた部屋から顔を覗かせる貴族達。
歓声と罵声が入り混じる中…広場の奥から姿を現したのは…
歪んだ笑顔を振りまくラザレスと、俯いたままのオーウェン。
そしてその後ろから縄で縛られたまま茶色いローブで全身を覆った人物が現れると、人々は一際大きな声を上げる。
まさに、それは死刑囚。
私 の 愛 し い 人 。
「―…ハイネ、」
唇を噛み締め、拳を握り締め…あと10分の刻の中で足掻いて見せようと私は誓った。
そんな私の姿をラザレスは笑うだろうか。
たかが小娘ごときに何が出来ると。
でも、それがどうしたのだ。
嘲笑うなら嘲笑えばいい。
例え“王族の証”を失っても。
何も出来ない小娘だとしても。
誇りさえ忘れなければ…私は女王でいられる。
ついに私は走りだした。
近くにいた貴族の剣を奪い、
「―…おい!貴様!」
「後で必ずお返しします!」
輝く刀身を引き抜いて、正面ではなく…北東へと回り込むと、
「そこを退きなさい―!」
城門を警備する憲兵に向かってその刀身を振り下ろした。
「っ、うわあ!き、貴様、何も、のあっ!」
「黙って、退きなさい!」

