◆ ◇ ◆

早朝の爆発騒動で、ざわつく海賊のアジトから少し離れた森の中。


「……、」


遠くから、黒い馬が駆けて来るのが分かった。

そしてその背に乗るのは、長い黒髪に自分と同じ金の瞳を持つ男。
オーウェンはそんな男の姿を睨むように見つめると、その名を呼んだ。


「…、父上。」


「…女王はどこだ。」


彼はオーウェンの隣に馬を止め、辺りを見回しながら問いかける。


「………。」


だがオーウェンは父を睨んだまま、頑なに口を開かなくて。


「女王は何処だと言っている…!」


それに対しラザレスは怒りをぶつけるが、


「ラ、ラザレス様…、女王陛下は…死刑囚と共に何処かへ…」


オーウェンの身が危ないと察知したフレッドが、代わりに口を開いた。


「…何?」


「わ、我々も捜索中であります故…、」


庇うフレッドを見ながら怪訝そうに眉をひそめるラザレスは、オーウェン視線を向けると小さく唾を吐き、悪態をつく。


「この、ガラクタが。」



刹那、震える腕と…俯く顔。
馬に乗り、先に森の中を行く父の姿を見て、


「…、っ」


恨みに任せ剣に伸ばしたその手。


…だが。